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『白い暴動』ザ・クラッシュ

『白い暴動』(1977)THE CLASH

Clash: UK Version

77年に発表されたクラッシュの記念すべきデビュー・アルバム。
結局のところ、全てのファースト・アルバムの中で俺が1番好きなのは、このアルバムです。

先月、ロンドンで起こった暴動の報道なんかを見て、このアルバムを思い出した人も多いんじゃないでしょうか。

『White Riot』

 
セックス・ピストルズの『ネヴァー・マインド・ザ・ボロックス』と双璧をなす英国パンクの名盤ですが、ピストルズのアルバムがプロデューサーのクリス・トーマスの功績が大きいのに対して、このアルバムのプロデューサーは、当時レコーディング・プロデューサーとしては素人同然のミッキー・フット。
そのため音質的には荒削りで、クリアーな音作りではありませんが、当時のクラッシュの「そのまま」が記録されているといえるんじゃないでしょうか。
それゆえに俺はこのアルバムを愛します。

アルバムに収められている曲は、一言で言えば「シンプルなロックンロール」ですが、そこからは怒り、悲しみ、葛藤、孤独、希望などあらゆる感情が怒涛のごとく溢れていて、とにかくとてつもない熱い!!
そして、ここにはロックンロールの「可能性」というものが鳴っていました。

『London's Burning』

 
“ロンドンは退屈で燃えている”と歌われた当時のイギリスは、失業率が10%を超えるという深刻な経済不況の中にあり、若者は学校を卒業しても職がないという状況でした。

そんな彼らがもっとも身近に親しんだロックは、現実の自分たちとはあまりにもかけ離れたもので、税金を逃れるために海外へ移住し、パーティーに明け暮れていたロック・スター達に、抑圧されている若者たちの状況を理解するのは不可能でした。

自分達が共感できる音楽がないなら、自分達で歌うしかないと、退屈を持て余していた若者達は、次々と楽器を手にしはじめ、イギリス国内に何百、何千というバンドが雨後のタケノコのごとく登場しました。
それは金もコネも技術はないが、「やりたい」という意志と知恵さえあれば、誰でもステージに立つことが出来る、ロックは特殊な技能を持った人達だけのものじゃないという、ほとんどその全てはピストルズの登場に刺激されたものでしたが、ロックが若者の手に戻った、痛快な瞬間でした。

『Career Opportunities』

 
現在のイギリスも移民政策を下地にして、失業問題など似たような状況にあるような気がするんだけど、新しいバンドはほとんど出て来てないような気がします。若者に昔のようなエネルギーがないのか、それとも情報に溢れ、全ての音が鳴ってしまった現在では、音楽に情熱を捧げるということに魅力を感じないんでしょうか。
ヴァクシーンズやビバ・ブラザーのようなリヴァイバル・バンドでもいいので、もっとたくさん出てきてもらいたいですね。そしてそこからクラッシュとか聴いたことないという若い人たちに過去にもっと素晴らしいバンドがいたことを知ってもらえればといいなと思います。俺もそうだったので。

『(White Man)In Hammersmith Palais』

 
クラッシュの功績は、ロックにレゲエを取り入れたことでしょう。
本作でも6分に及ぶレゲエ曲『ポリスとコソ泥』のカバー曲が収録されていて、パンク・バンドではあるけど、単調なパンク・ロックだけを鳴らすバンドではないということを、この時点ですでに示していました。

そんなクラッシュのシングルで1番素晴らしいのは、間違いなく『ハマースミス宮殿の白人』ですが、その曲の歌詞にはこういうラインがあります。

~白い肌の若者たちよ、黒い肌の若者たちよ、
 別の解答を見つけるんだ~

現在のロンドンの状況を見て、天国にいるジョー・ストラマーは悲しんでいるに違いありません。

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コメント

こんばんは。
私も、世間情勢というか、そういうものを扱うアーティストが(探せば居るのかもしれませんが)出てきて欲しいと思っています。
それは、イギリスだけではなく、今の日本でこそ、歌うべきことがあると思うんですけど…。
誰か居ないんでしょうか。

投稿: Note | 2011年9月 7日 (水) 00時59分

Noteさん、
UKパンクやハードコアが激しかったのは、時代背景によるところが大きいと思うので、今の時代に同じようなバンドが出てくることはないんでしょうね。とくに日本の場合は、音楽シーンに関係なくどれだけ自分の言葉を持っているかでしょう。根本的に歌うべきものは「愛」だと思います(笑)。

投稿: william | 2011年9月 7日 (水) 21時40分

williamさんがクラッシュ好きなのは知っていたので、
このアルバムがまだ記事になってなかったことが意外でした。

>結局のところ、全てのファースト・アルバムの中で俺が1番好きなのは、このアルバムです。

↑こう強く言える作品が自分の中にハッキリあるのが素晴らしいと思います。
僕なんて優柔不断で選ぶ日の気分でコロコロ変わってしまいそうですもん(笑)。

投稿: 古巣 鳴人 | 2011年9月 9日 (金) 21時46分

>古巣さん、
好きなアルバムといえども、今となってはそんなに聴く訳じゃないので、タイミングが合わないとなかなか書く機会がなかったりするんですが、このアルバムは、ロンドンで起こった暴動をうけて書こうかなと。
「1番好きなファースト・アルバム」というくくりだと、意外にそんなにないんですよねー、いや好きなものはたくさんあるけど、「全ての中で1番までじゃないな」となり、結局はやっぱりクラッシュだろうと。
古巣さんの候補は何になるんでしょうかね?ニュー・ウェイヴ系か、ヴィジュアル系か、究極的に暗いものなのか、それともスカッと爽快なものなのか(笑)。

投稿: william | 2011年9月 9日 (金) 23時17分

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